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第347回『ぼくたちの哲学教室』 ●上映日:2025年8月 埼玉会館

ゲスト:池田 崇さん(こどものための哲学対話 団体代表)

 

2025815日(金)『ぼくたちの哲学教室』のアフターセミナーを開催しました。

 

映画の中ではベルファストという緊張感漂う地域の小学校で校長先生が哲学の時間を設け子ども達と対話していく様子が描かれています。そこには二度と争いを繰り返したくないという校長先生の想いが強く込められています。

 

この作品の様に子ども達と答えのない問いに対して考える時間を大切にしようと活動を始めたのが池田さんです。ご自身が哲学カフェに参加した事をきっかけに子ども達とこうした時間がもてないだろうかと考えていた所息子さんから学校での出来事を聞かされます。

真面目な話をしていると「意識高い系」という言葉でからかわれたというのです。その事にハッとした池田さんは「ちゃんと話を聴いてくれる大人もいるよ」とそいう場所を作る為に動きだします。

 

そこでのルールは、話すときは手をあげる・お話は最後まで聞く・わかったフリはしない・思いやりをもとうの4つです。映画の内容からも人の話を最後まで聞くことの大切さが伝わってきます。皆が話したくてどんどん手が挙がってしまう時はスピードを緩める様に意識をするそうです。自分が言いたい事だけを言うのではなくて人の意見をきちんと受け止めた上で次の意見を言えるように。

 

また、そこでは答えを出すことが目的ではなくみんなで話したり聞いたりする体験こそが大事だとおっしゃいます。むしろモヤモヤを持って帰ってほしいと。

 

池田さんはお話の初めに会場の皆さんに質問をしました。

「目玉焼きは白身から食べる?黄身から食べる?」「何をかけて食べる?」

手を挙げてもらうとこれだけでも色んな人がいる事が分かります。語彙力が少ない子どもたちにはこんな質問をしながら進めて行く事もあるそうです。

 

「哲学」という言葉は難しそうですが、こうしてみんなで一つのことを考え他の人の考えを知り自分の考えにも気づいていく、他者との関わりの中で築き上げられていくものなのかもしれませんね。

 


第346回『フラッグ・デイ 父を想う日』 ●上映日:2025年8月 彩の国さいたま芸術劇場

ゲスト:独立行政法人造幣局 職員(竹村さん、久世さん)

 

2025年8月9日(土)『フラッグ・デイ 父を想う日』のアフターセミナーを開催しました。

 

映画は犯罪者である父を娘の立場から愛をもって見つめる姿が描かれているのですが、その父は贋札造りという人生最大の大仕事をします。映画の冒頭、父の造った贋札を見て娘は「美しい」と呟くのです。

 

実話を基にしたお話ですが、お金を偽造するというのはそんなに簡単に出来るものなのでしょうか?

私達の身近に造幣局さいたま支局が在るのをご存知ですか?

せっかくなので我が国の偽造防止技術についてお話いただく事になりました。

 

造幣局は貨幣がご専門なのですが、最初に偽造紙幣の割合のグラフでポンドやユーロと比べ日本の偽造紙幣の発見数が低い事を示してくれました。

 

続いて令和3年から発行されている3代目500円に施されている偽造防止技術について詳しく紹介して下さいました。ここでは用意した500円硬貨を皆様にお配りし実際に観察して頂いています。

 

バイカラー・クラッド技術、異形斜めギザ、潜像、微細文字、微細線、微細点など様々な偽造防止技術が1つの500円硬貨の中に込められているのですね。

 

最後にキャッシュレス決済の話題にも触れ、海外に比べてキャッシュレス比率が低いのは日本のお金の信頼度が高いからだと言われているのだそうです。

 

 

さいたま新都心にある独立行政法人造幣局さいたま支局では水曜日を除く平日に無料で工場見学ができます。ガイドツアーは予約が必要ですのでホームページを調べてみて下さいね。

 


第345回『白日青春~生きてこそ~』 ●上映日:2025年7月 埼玉会館

ゲスト:藤えりかさん(朝日新聞社戦略部次長)

 

2025718日、『白日青春』のアフターセミナーを開催しました。

“アンソニー・ウォン 香港俳優としての思いというテーマでこの作品の主人公である香港の名優アンソニー・ウォンさんについてお話をしていただきました。

 

今回、藤さんがこのテーマを選んだ背景には、過去に2度アンソニー・ウォンさんにインタヴューをしていたことがあります。そしてその時期が香港の民主化運動が広がっていた2019年と国家安全維持法が施行された(2020年)後の2024年の2回であり、彼自身がこの香港社会の変化に翻弄されてきた姿をみてきたからのようです。

 

香港で若者による民主化運動「雨傘運動」が起きたのは、2014年。藤さんによれば、その運動を弾圧した警察に対し憤ったウォンさんはSNSで民主化デモの支持を表明。その結果、彼が出演していた中国映画が公開中止となり俳優としての仕事も一気になくなってしまったそうです。「中国で稼いでいるくせに中国の批判をするな」とSNS上でも非難されるようになったとのことです。

 

2020年香港は、「国家安全維持法」を施行。政府批判をすると逮捕されるようになり一気に民主化運動は沈静化していきます。その結果、「難民支援の活動家や人権派の弁護士らが香港を離れ、難民の苦境は加速」(藤さん)していくことになります。
その頃のウォンさんは、2020年に公開された『淪落の人』で半身不随となった主人公を演じ若いフィリピン人家政婦との交流を描いた作品に出演しました。今回の『白日青春』では香港在住のパキスタンの難民とのやり取りが描かれています。

藤さんによれば、ウォンさんは「香港に多く住んでいる難民や移民の人々を扱った映画がない」というようなことをお話されたそうです。彼はこのような作品に出演することで社会が抱える差別等の様々な問題を浮き彫りにしようとしたのかもしれません。そして、以前のように所謂“大作”の作品に出演する機会には恵まれていないようです。

 

藤さんは「政府の取り締まりが厳しくなる中で、言葉を選びながらも自分の思いを伝えようとするウォンさんをみて、可能な限りその思いをみなさんに伝えられるようにしたかった」と語り、私たちにウォンさんの人柄、香港社会の現状についてわかりやすくお話してくださいました。

 


第344回『孤独のススメ』 ●上映日:2025年7月 彩の国さいたま芸術劇場

ゲスト:山根風仁さん(チェロ奏者)

 

2025年7月12日『孤独のススメ』のアフターイベントとしてトーク&ライブを開催しました。

 

はじめに映画の感想、映画と音楽の関係、そして主人公も愛するバッハの魅力について山根さんのお考えを語って頂きました。

この映画の舞台となるオランダにも滞在経験のある山根さんは映像からも伝わるこの国の閉塞感にふれ、オランダ人の気質についても教えて下さいました。

また作品中に流れるバッハの「マタイ受難曲」は主人公の心情とリンクする形で作品にとって大きな意味を持つだけでなく、オランダでは大変身近な存在なのだそうです。

 

バッハが多くの人を魅了する理由としては、まず「音楽の強度」という言葉で表現されました。その上で音楽と言葉が一致しない瞬間がないつまり全ての音と言葉がピッタリ寄り添っている点があるとおっしゃいます。加えてメッセージが分かり易い事から言葉や宗教の垣根を越えて人々が共感しやすいという点をあげました。

 

ヒストリカル・チェロ奏者という肩書をお持ちの山根さんがこの日演奏するのはバロックチェロ。私たちが普段目にするチェロとの違いをお聞きした後にお待ちかねの「バッハの無伴奏チェロ組曲第1番」を披露して下さいました。

 

演奏の素晴らしさは言葉ではお伝えしきれませんが、幸せな気持ちで皆さんが帰路につかれたのは想像できますね。

 

快く引き受けて下さった山根さん、ご紹介下さった大塚先生、ご縁を下さった彩の国さいたま芸術劇場の職員の皆さん、ありがとうございました。

 

以下、山根さんのご経歴を簡単に紹介いたします。

 

東京藝術大学卒業後、英国王立スコットランド音楽院を終了、令和4年度の文化庁新進芸術家海外研修制度によりブリュッセル王立音楽院に学ぶ。

第23回青山音楽賞(新人賞)受賞。

近年は19世紀~20世紀初頭の演奏習慣の研究に力を入れ、新しいコンサートシーンの開拓に取り組んでいる。

 

 


第343回『ミセス・クルナスVS.ジョージ・W・ブッシュ』 ●上映日:2025年6月 彩の国さいたま芸術劇場

ゲスト:寺中誠さん(アムネスティ・インターナショナル日本元事務局長)

 

2025621日『ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ』のアフターセミナーを開催しました。テーマは、“「ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ」に表れたテロとの戦いとグアンタナモ”。ゲストの寺中誠さんのご専門は、犯罪学・国際人権法等です。

 

この作品は、“9.11”後のドイツが舞台です。そこで暮らすトルコ移民の女性が、ドイツ人弁護士とともにキューバのグアンタナモ米海軍基地に収容された息子を救うために闘った事実を基にしています。

寺中さんはこの作品について「事実を描いてそれをコメディタッチの作品にしているのが凄い」と語りました。主人公のトルコ人女性ラビエ・クルナスと一緒に戦うドイツ人弁護士ベルンハルト・ドッケの仲間の女性弁護士の甥が貿易センタービルで犠牲になったこと、ラビエの息子ムラートがドイツからパキスタンに渡航する足取り等のエピソードに関しても、その理由やチケット入手方法も事実に基づいているとのことでした。

トルコ移民の2世となるムラートは、コーランの勉強会に参加しようとパキスタンに向かい逮捕されグアンタナモに収容されます。パキスタン等の実情を知るならば、この行動が所謂“イスラム原理主義=タリバン”と疑われるよなあ…なんて思うかもしれません。寺中さんは、移民2世のムラートはドイツ社会で生まれ育っているため、自身の出自と深く関わりのあるイスラム教について知ろうとする行為はごく自然のものではないかと説明、ただしそのような“イスラム復興運動”の一部にはタリバン等の“イスラム原理主義”と呼ばれる人々も含まれるため誤解されることも多いようです。

また、ムラートが収容された、悪名高き“グアンタナモ米軍基地”は、場所がキューバにありアメリカの法律が適用しない治外法権地域とのこと。そのため、アメリカが“テロリスト”と判断した人たちをここに収容しアメリカ国内法では認められている被疑者の人権等を無視し、虐待や拷問などを行うことが可能となるようです。

 

寺中さんは2003年にアブグレイブ刑務所で起きた米軍兵士によるイラク人虐待事件にも触れ、加害者側の米軍兵士についても語りました。兵士の多くは「性的少数者」「民族的マイノリティ」「貧困層」「低学歴若年層」から構成され、おそらく兵士になるという選択肢しか残されていないような若者が多く存在していました。それが何を意味するのか等このような作品を通して私たちは考えていくことが必要、と感じることができたイベントでした。

 


第342回『ポトフ 美食家と料理人』 ●上映日:2025年6月 埼玉会館

野菜販売 木曽農園さん

 

6月13日(金)「ポトフ美食家と料理人」のアフターイベントとして新鮮な埼玉の野菜を販売いたしました。提供して下さったのは桜区に農園をお持ちの木曽大原さん。

 

当日用意して下さったのはレタス、葉付にんじん、ズッキーニ、丸ズッキーニ、じゃが芋、玉葱、梅と彩りも豊かな野菜たち。10時30分の回上映終了後に販売を行いましたが、あっという間に次々売れていきました。

 

この日は野菜販売の他にも「ポトフ」にちなんで当団体のスタッフ、ボランティアから集めたポトフのレシピもご紹介しました。写真と具材を張り出しましたが興味深く眺めていらっしゃる方々が印象的でした。

 


第341回『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』 ●上映日:2025年5月 彩の国さいたま芸術劇場

ゲスト:氏家理恵さん(聖学院大学人文学部教授)

 

2025524日『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』のアフターセミナーを開催しました。ゲストの氏家理恵さんの専門は、19世紀後半以降の英語圏文学・映画作品と文化等です。

 

この作品は、19世紀から20世紀にかけて活躍した猫の挿絵で有名な画家ルイス・ウェインの生涯を描いた作品です。年上で“身分違い”の女性エミリーと恋に落ち結婚、彼女がわずか数年で亡くなった後、相棒の猫“ピーター”と暮らしながら数々の名作を生み出していきます。

 

先ずは、氏家さんに、ルイスの大切な相棒のネコ”とヒトの関係について伺いました。当時のイギリス社会では、「ネコはマザーグース等の唄や物語に出てくるし、擬人化されたネコ等動物イラストの流行もあり身近な存在で、お屋敷等のネズミ駆除等に役立っていた」とのこと。ただし、犬のような“家族の一員”のような存在ではなく、これは、マイペースな“帰属性がない”というネコの性分も関係しているようです。

 

そしてウェイン家の懐事情に話は移ります。ルイスは、一家の長として、母妹の生活を支えるため必死に絵を描き売り込みますが生活は豊かにならず、一方妹たちは日々絵を描き刺繡をして過ごします。“金がないなら働けば…?”と疑問が浮かぶ現状ですが、ここで氏家さんは、当時のイギリス階級社会について解説してくれました。

当時は上流・中流・下層、という大きく3つの階級があり、19世紀は中流階級が拡大した時代であったとのこと。そして中流階級の人々は自分たちがより上にいくために、「上流階級(Upper Class)の真似やコネクションを作る」ことを意識していたそうです。

 

そのため中流階級のウェイン家は、“女性が金を稼ぐ”、下層(労働者)階級のようなことはせず、氏家さん曰く、「ルイスがやるべきことは、おそらく妹たちに金持ちの結婚相手を探すことだったのかもしれません」ルイスの結婚相手の家庭教師のエミリーは、教育を受けた女性ではあるけれど、自ら金を稼ぐという労働者階級に近い存在ということで“身分違い”と家族から結婚を反対されたと推測されます。

 

作品から垣間見えるイギリス社会の文化や伝統等、私たちには一見理解できないようなことを、氏家さんはひとつひとつ丁寧に解説してくれたことで、改めて映画の魅力を堪能できたイベントとなりました。

 


第340回『チーム・ジンバブエのソムリエたち』●上映日:2025年5月 埼玉会館

ゲスト:沼田英之さん(恵比寿・WINE MARKET PARTY店長)

 

5月9日(金)「チーム・ジンバブエのソムリエたち」アフターセミナーを開催しました。

 

恵比寿ガーデンプレイスにあるWINE MARKET PARTY店長である沼田英之さんが今回のゲストスピーカー、ブラインドテイスティングの楽しみ方についてお話して下さいました。

 

まず映画を観ての感想では、情勢の複雑なジンバブエ人のお話なので「日本」という平和な国でソムリエをしている身分としては色々と考えさせられるとのこと。また日本は北半球と南半球のどちらのワインも手に入り易い土地柄だとも教えて下さいました。

 

沼田さんのショップでは毎週月曜日と火曜日にブラインドテイスティングを楽しむ事ができます。3種類のワインをテイスティングし「国」「品種」「年号」「アルコール度数」を当てるゲームとなっています。

 

ソムリエではないけれど?と思われるかもしれませんが、普段自分が選ばないワインに出会えたり、価格などの先入観なく自分の好みが分かったり、たとえ間違えてもソムリエに質問して知識を深めていくという楽しみ方があるそうです。

 

最近ではブラックグラスという視覚を遮られるグラスでのテイスティングも流行っているとか。なかなか難しそうですが、お味の方は・・というと人は見た目から入る情報が大切な様ですね。

 

贈り物としてのワインの選び方についても色々と例をあげて下さいました。「生まれ年」というのは思い浮かびやすいですが、お相手の方の思い入れのある国、その方から想像する柄のラベル等お相手と結び付けて考えると選びやすいですね。

 

シャンパーニュや赤ワインはお祝いの時に1本で贈るけれども白ワインを1本というのはあまり例がないそうですよ。

 

最後には会場の皆さんからの質問にも丁寧に答えて下さって楽しいワイン講座となりました。

 

 


第339回『あまろっく』 ●上映日:2025年4月 蕨市民会館


第338回『いつかの君にもわかること』 ●上映日:2025年4月 彩の国さいたま芸術劇場

ゲスト:押場靖志さん(イタリア映画研究)

 

2025419日(土)『いつかの君もわかること』のアフターセミナーを開催しました。

 

この作品は、余命宣告を受けた若いシングルファーザーが4歳の息子のために里親を探すという物語。北アイルランドの男性の実話をヒントにこの作品をつくったという監督ウベルト・パゾリーニは、イギリスで映画製作を行うイタリア人です。日本でも大ヒットした『おみおくりの作法』(2013年)の監督であり、映画界の巨匠ヴィスコンティの親戚でもあります。

 

押場さんのトークは、ともかく“熱く面白い!”のが特徴です。溢れる知識と情熱で、あっという間にお客さんを笑いの渦(?)に巻き込みます。先ず彼が注目したのは、映画のあちこちの場面で暗示するように出てくる“赤色=red”。これは、ヨーロッパでは“愛=love”を意味するということを力説。原題は「Nowhere Special」(特別な場所はどこにもない)、そしてイタリア版のポスターには副題 “愛の物語”とついているそう…「だから、主人公の上着、息子マイケルの帽子、ケーキのろうそくにマイケルへの手紙もすべて“赤”…そして最後のシーンにもたくさんの“赤”が出てきます。それはすべて“love”を意味しているんです!」

 

また、この作品の大きな特徴のひとつがほとんどハンディカメラで撮影されていること。不意な動きをするこども(マイケル)の動きにも対応できるようにとのことですが、映像をみると画面の揺れている様子等を感じることができます。この特徴が結果としてドキュメンタリータッチの画風になり観るものを引き込んでいくとのことです。

作品の内容は決して明るいものではありません。しかしながら、あまり暗い印象がないのは、押場さん曰く「音や言葉などを可能な限り抑えて、ヒトの動きや表情、空気感等で表現する監督の演出」が関係しているそう。また、監督が影響を受けたという小津安二郎監督の作品との共通点を挙げるなど、押場さんならではの映画の楽しみ方を伝授してくれました。

この作品は全体を通して静謐でおだやかな時間が流れている印象を受けます。そんな静けさを裏切るかのように、押場さんは、“笑い”と“感動”と“情熱”のパワフルな語り口で私たちを魅了したのでした。 

 

 


第337回『ふたりのマエストロ』 ●上映日:2025年4月 埼玉会館

ゲスト:中川真文さん(指揮者・音楽教室講師)

 

4月11日(金)「ふたりのマエストロ」アフターセミナーを開催しました。

 

指揮者であり音楽教室の講師もされている中川真文さんが「職業としての指揮者、音楽監督とはどんな存在なのか」等映画を理解する上で重要なポイントを話して下さいました。

 

もともとホルン奏者であった中川さん、スポーツの監督を例にサッカー選手がサッカーチームの監督になる様に楽器の奏者が指揮者になるのは自然な流れであると語ります。実際に2種類の長さのタクトを持って長いものはより遠くの奏者に届くのだと実演もして下さいました。

 

その細いタクトの振り方で曲の強弱であったり、どの様に表現して欲しいかを奏者たちに伝えるのですが、方法は指揮者それぞれ。体力も使うので高齢の指揮者であれば小さな動きで表したり体の大きい人であればダイナミックになったり。

 

映画の主人公はミラノスカラ座の音楽監督に招かれるという話から「音楽監督」という存在についてもお話くださいました。数人所属している指揮者の中でも最高の権力を持ち、選曲や全体の構成を決める決定権を持つ立場であると。なので映画の最後に2人で指揮をする場面は一あり得なさそうですが、音楽監督が決めたのであれば十分あり得る事だとおっしゃいます。

 

物語では指揮者の親子のすれ違いが描かれていましたが、実際の芸術家の親子の中でも確執が取り沙汰されている例を何件か挙げて下さいました。親子で同じ事をするというのは時に難しい事でもあるのですね。また同じ指揮者という立場から観衆を前にする緊張から主人公が感じる恐怖にも共感できるという事でした。

 

 

指揮者の方のお話を聴く機会というのは滅多にありませんので大変貴重な時間になりました。

 


第336回『燃えあがる女性記者たち』 ●上映日:2025年3月 埼玉会館

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第335回『チア・アップ!』 ●上映日:2025年3月 彩の国さいたま芸術劇場

ゲスト:石川佳代さん、林田惠子さん(元さいたまゴールドシアター団員)

 

3月8日(土)「チア・アップ!」アフターセミナーを開催しました。

 

上映会場の彩の国さいたま芸術劇場には2006年から2021年に活動していた劇団がありました。それは芸術監督を引き受けた蜷川幸雄氏のこんな言葉から始まります。

 

『年齢を重ねるということは、様々な経験を、つまり深い喜びや悲しみや平穏な日々を生き抜いてきたということの証でもあります。その年齢を重ねた人々が、その個人史をベースに、身体表現という方法によって新しい自分に出会うことは可能ではないか?ということが、私が高齢者の演劇集団を創ろうと思った動機です。その表現集団の名前を「さいたまゴールド・シアター」とします。』

 

そしてこの言葉に突き動かされる様に応募し、千人を超える応募者の中から選ばれ活動を続けてこられたお二人が登壇して下さいました。

 

お一人は教師として働いた後キャリアカウンセラーとして女性と仕事をテーマにお仕事をされ、定年退職のタイミングで応募をした石川佳代さん。合格後もフリーのキャリアカウンセラーとして働きながら劇団の活動を続けられました。蜷川氏の舞台を観て感動した経験から「面接で蜷川さんに会えるかしら?」そんなファン心理で応募されたそうです。

 

もうお一人は義理の両親、ご自身の両親の介護に追われどうしようもないストレスに押しつぶされそうな時に募集記事をみつけ「新しい自分に出会う」「55歳以上」という言葉にこれだ!という想いで応募した林田惠子さん。それまでは身体を動かしたい、自分で表現したいという気持ちが募っていたものの芝居は観るのもやるのも興味が無かったといいます。

 

お二人には映画「チア・アップ!」の感想、応募の動機、劇団員になってからの変化、印象に残っている作品、蜷川氏とのエピソードなどをお話して頂きました。

 

石川さんは定年退職と同時にさいたまゴールド・シアターの活動が始まりその後もいきいきとしている様子を見た娘さんからは「定年してからが一番楽しそう」と言われ、ご自身も定年後の20年ずっと楽しいとおっしゃいます。これから定年を迎えるのも怖くないと思えるお話ですよね。

 

林田さんは「解放」という言葉で劇団に入ってからの変化を表現して下さいました。自分を頼ってくる家族のケア、辛いと思っていた事からの解放。そして初めて自分を必要とされない世界の中で貪欲に色んな事を吸収し世界が広がったとおっしゃいます。まだまだ吸収できることは探せばあるという事です。

 

映画を観て感じたお話の中に「生ききる」という言葉を使っていらっしゃいました。主人公が生ききった姿に感銘を受けた、自身もそうありたいと。この「生ききる」という言葉とっても素敵な響きです。

また映画の中ではチアをやるにあたって仲間の存在が重要になってきますが、劇団の活動も仲間の存在は大きかったといいます。お互いがお互いの成長を見守りあっていたのでしょうね。

 

最後にお二人に映画の主人公マーサからの質問に答えて頂きました。

「自分の一番好きな所を教えて!」

 

「好奇心旺盛なところ」という石川さん

「思ったら行動してしまうところ」という林田さん

 

それがあったからさいたまゴールドシアターの一員になれたのは間違いないです!

 

映画からもお二人のお話からも「年を重ねるって楽しいんじゃない?」そんな希望が湧いてきました。

そしてお二人のパワーを蜷川さんが見逃がすはずが無いと感じる対談でした。

 


第334回『ぺーパーシティ東京大空襲の記憶』 ●上映日:2025年2月 埼玉会館

ゲスト:エイドリアン・フランシスさん(当作品監督)

 

 2025218日『ペーパー・シティ東京大空襲の記憶』のアフターセミナーを開催しました。

オーストラリア出身のエイドリアン・フランシス監督にこの作品に対する思いや映画の魅力等についてお話を伺いました。

 

この作品の最初の画面に、ある言葉が浮かび上がります。he struggle of man against power is the struggle of memory against forgetting”( 権力に対する人間の闘いは、記憶と忘却の闘い)。エイドリアンさんは、若い頃、作家ミラン・クンデラの小説にあるこの一節に衝撃を受けたとのこと。今回の映画作品にも影響を与えているとのことでした。

 

エイドリアンさんは、十数年前、アメリカのドキュメンタリー映画『戦争の霧(The Fog of War)』を観て東京大空襲を知ったそうです。この作品は、ケネディ政権時代のアメリカの国防長官で東京大空襲の指揮官カーチス・ルメイの部下であったロバート・マクナマラのインタヴュー作品です。そして東京大空襲とは、都市の1/4を破壊し10万人もの人々が亡くなる大規模で破壊的な行為なのに、広島や長崎の原爆のように知られていないことやその事実に関する公的な記念碑や資料館等がないことに驚いたそうです。エイドリアンさんの故郷、オーストラリアだったら記念館等を立てるだろうとお話されました。

 

また、この作品を監督したことで「戦争というのはVSと単純に思っていたけれど、空襲の生存者の方から話を聞くことで、戦争によって増えていく民間人の犠牲者について考えるようになった」とのこと。「第1次世界大戦時の民間人の犠牲者は約5%、第2次世界大戦時は約50%、そして1990年代以降は、犠牲者の約90%が民間人と増え続けています。現在ガザでの紛争では、昨年で約5万人の民間人が犠牲になっているといわれており、戦争による民間人への影響について考える必要がある」とお話されました。

 

現在も世界で紛争・戦争が起きています。「日本もオーストラリアも民主主義の国。いま日本は、防衛費を増やし憲法九条を変えようという動きによって戦争に近づこうとしている。しかし、私たちは選挙に行き、話し合い、デモをするなどシンプルな行動を起こすことで未来を変えることができる」とお話をされました。

 

その他、エイドリアンさんは一番好きな映画に『2001年宇宙の旅』を挙げ、セリフが少なく音楽や映像で私たちにいろいろなことを伝えてくれる作品とその理由を語りました。学生時代、映像の魅力を知ったというエイドリアンさんは、映像は、言葉(セリフ)を超えて伝えることができるものがあると感じているそうで、今回の作品『ペーパー・シティ』も、セリフが少なく登場人物の表情や動きや周囲の音等で何かを伝える、ということを意識されているようでした。

 

この作品の主要な登場人物3名は、完成をみることなく亡くなってしまったそうです。エイドリアンさんにとって、この作品はまさにhe struggle of man against power is the struggle of memory against forgetting”( 権力に対する人間の闘いは、記憶と忘却の闘い)、という言葉を体現したものとなったのかもしれません。

 


第333回『鍵泥棒のメソッド』 ●上映日:2025年2月 蕨市民会館


第332回『枯れ葉』 ●上映日:2025年2月 彩の国さいたま芸術劇場

ゲスト:認定NPO法人クッキープロジェクトさん(クッキー販売)

 

28日(土)『枯れ葉』上映の合間に25種類以上のクッキー達を販売しました。

クッキープロジェクトさんは「かわいそうだから」ではなく「プレゼントしたくなる」を合言葉に障がい者の手作り品の向上と販路開拓に取り組んでいらっしゃいます。

現在は埼玉県小児医療センター内のおかし屋マーブルと北浦和にあるカフェ併設のマーブルテラスでクッキー等のお菓子を買うことが出来ます。

38日(土)〜10日(月)には浦和コルソのクッキーバザールにも出店予定ですよ!

マーブルには色んな人が混ざり合うという想いが込められています。

駆けつけて下さったボランティア親子さんもありがとうございました。

 


第331回『海の上のピアニスト』 ●上映日:2025年1月 埼玉会館

ゲスト:米田雄一さん(ギタリスト・川口在住)

 

1月24日(金)埼玉会館にて「海の上のピアニスト」アフターライブを開催しました。

 

いつもはサックスやボーカルとコラボでのご出演ですが今回は単独で。もともと大学のJAZZ研ご出身でJAZZをバックグラウンドとした演奏スタイルでしたがその後様々なジャンルの演奏・音楽制作に携わり、地元川口では音楽の普及や地域活性化を目指した活動もなさっています。

映画のアフターライブという事で今作ゆかりのエンニオ・モリコーネ映画音楽を特集して下さいました 

 

「海の上のピアニスト」から

   1900THEME

   A MOZART RE-INCARNATED

   MAGIC WALTZ

「ニュー・シネマ・パラダイス」から

   MAIN THEME

   LOVE THEME

   CHILDHOOD AND MANHOOD

ONCE UPON A TIME IN AMERICA」から

   ONCE UPON A TIME IN AMERICA

映画のシーンが蘇ってくる様な至福の時間でしたね。

今回の上映前はお問い合わせのお電話も多く、ライブ目当てに足を運んで下さった方もいらっしゃいます。昔観た名作をパートナーと楽しんだ方も。映画にとって音楽は欠くことのできない大切な要素だと改めて感じる作品でした。

 


第330回『クーリエ:最高機密の運び屋』●上映日:2025年1月 彩の国さいたま芸術劇場

ゲスト:まつかわゆまさん(シネマアナリスト)

テーマ:イギリス映画はスパイがお好き! 

 

1月18日(土)「クーリエ:最高機密の運び屋」アフターセミナーを開催しました。

 

 初めに最近の映画では核兵器または原爆の取り扱われ方に変化があるとのご指摘をされました。昔は最終兵器として国を守る為などといった捉え方をしていたのに対し「オッペンハイマー」に見るように原爆が貴方の子ともにどんな影響を与えるのか?といった視点で描かれていると。

 そして今まで知られていなかった出来事や描かれてこなかった事柄が次々映画化されている点にも触れました。皆さんにお配りした資料には参考にという事で「裏切りのサーカス」「13デイズ」「親愛なる同志たちへ」「ジョーンの秘密」などの映画を挙げて下さっています。

 話はイギリスの美男子俳優ブームへと飛びますが、せっかく実力のある俳優が育ってもアメリカの映画界に流れてしまうといった苦労がイギリスにはあったそうです。男性が好む映画のマッチョ俳優ばかりになってしまったアメリカにあって、甘い顔立ちで女優さんの相手役に適した俳優が必要になったのだと。この映画の主役ベネディクト・カンバーバッチもその第2次ブームの中の一人だったと言います。美男子かどうかの判断は皆様におまかせして。

 テーマは「イギリス映画のスパイ」なので最後は007に始まりなぜイギリスでスパイなのか?地理的なもの政治的背景等からひも解いてくれました。エンタメ色の強いスパイ映画かシリアスなスパイ映画か観る側も好みが分かれますよね。

 お客様の反応も大きく頷いたり笑い声があがったり、多くの方がお話に出てきた映画や物語を鑑賞されているのだという事がわかります。また事件の年代的に記憶にあるというお客様もいらしたり今の世界情勢と重ねる方もいらっしゃいました。

 


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